生きる、ことが最低目標であり最大の目標となった日
その頃のみさきは、ちょうど10歳。
‥‥‥今なら知ってる。大人への入り口に立つこの時期は誰しもゆらゆらするものなのだ。
でも、その頃の私は知らなかった。
荒れ狂うみさきをどうしたらいいのかわからなかった。
‥‥‥今ではわかる。急激に成長する自分に恐れおおののき、また、いろんなことが見え始めるこの時期、不安、緊張、恐怖。さまざまな感情が押し寄せていたはずだ。
でも、その頃の私にはそんなみさきの気持ちの奥まで見ることはできなかった。
あらゆるところに相談に行った。
学校に行ってないこと。
私や妹への暴言がひどいこと。
かんしゃくがひどいこと。
何日も何日もお風呂にも入らないこと。
夜眠れなくて、大騒ぎすること。
学校に行かないから昼間にすることがなくて、一日中ぶらぶらとどこかへ買い物にいかなければならないこと。
150センチの服、22.5センチの靴など、数字にこだわりがあり、もう体は大きくなっているのに、どうしても大きなサイズが買えないこと。
何よりも、パニックがいつどこで起きるかわからないから、一日中家じゅうがみさきの言動を伺いながら暮らしていること。
思い出し始めたらきりがない。
そんな日々に私は本当に本当に疲れ切っていた。
その時目に浮かんだのは下の子たちの顔
今となっては、原因がなんだったのか思いだせない。
だけど、車を運転している時、みさきが大声で泣き叫び始めた。
私に暴言を吐いてくる。
私はそれに応答する。
もっと暴言を吐いてくる。
お互いに暴言を大声で叫び続けた。
運転しながら泣きながら叫ぶ私も、後部座席で、手足をバタバタさせて暴れながら泣き叫ぶみさきも(シートベルトだけはしている。ここは、我が家は真面目)、もう声もかれはててかすれ声。
もうどうなってもいい。
私は、このまま電柱に突っ込みたいという衝動に駆られた。
その時、浮かんだのは、保育園に行っている息子と、小学校に行っている娘の顔。
ふと我に返った。
ミラー越しに見えるみさきも目を真っ赤にして疲れ果てて寝ていた。
私、何してるの?
その日を境に私の人生の目標が大きく大きく変わった。
人生の最低の目標は 生きていること。
そして、最大の目標も 生きていること。
今日も1日生きたことを自分で褒めながら生きていこう。